これから本格的に大波が襲っくる「少子高齢化」

東京オリンピックの熱も冷めた頃2025年。

総人口は2013年の1億2,730万人か1億2,066万人に減少。

国力に一番影響のある生産年齢人口(20歳~64歳)は

2013年度7,296万人から6,559万人と737万人減少します。

これは、都道府県別人口4位の愛知県750万人を上回っています。

愛知県全人口+αが消滅するのです。

消費需要が更に減少し、それは大規模なリセッション(景気後退)

に繋がる可能性がありますね。

 

競争の時代から共存の時代へ

高度経済成長期の右肩上がりの時代は誰しも、

「追いつけ、追い越せ」と競争社会の中で

当り前の様に教育されて来ました。

経済が右肩上がりなので、ライバルが直ぐに表れるし

蹴落とせば、莫大な利益に繋がります。

しかし、バブル崩壊、リーマンショック、東日本大震災を経て

これから本格的な少子高齢化社会を迎えます。

ライバルどころか、自分達の存在自体も危うい時代になりました。

ですから、大企業中心に統合、吸収合併、提携が進んでますよね。

銀行、保険、は統合され且つての社名は無くなり、

自動車、鉄鋼、石油元売りも資本提携して

独資での会社は減少しています。

大企業は、業界の団体に属してますので、普段はライバルのはずの

TOP同士やその下の幹部クラスも関係性を構築し情報交換してますので

時代に敏感に対応する事が出来ます。

しかし、中小企業はなかなかそうはいきませんね。

2025年まで10年を切りました。

「まだ10年ある」の思考では残念ながら大変な結果になります。

「もう10年切った」に気づいて、決めて、行動しましょう。

経営環境の変化に挑む三島の町工場の脱下請け

静岡県三島市に拠点を置く、主に自動車向けカーコンプレッサーを

製造するアルミダイカスト専門メーカーの三光ダイカスト工業所と言う、

社員数130名のいわゆる自動車部品下請けメーカーがあります。

その3代目の三宅ゆかり社長は、元々美容業界に身を置き、

自動車部品とは縁の遠い存在でありました。

そんな中、2代目社長の急な難病により僅か3ヶ月で会社を継ぐ事を決断します。

就任当時は苦労の連続だったそうです。

営業活動がなされず、売上が半分に減少している事でさえ社員には

認識が薄く 打開しようにも就任間もない美容業界から来た三宅社長に、

社員の信用度は低くかったのです。

殆どが女性の職場であった前職に比べ、男性社員が多い工場では

コミュニケーションを一つ取るのにも一苦労の毎日であった事は

想像に難くないですね。

現場を巡り、現物に気づき、現実を知る

就任当初は会社に溶け込む事に専念していましたが、

ある日工場全体の汚れに 気が付きます。

製造業には当り前の5S活動(整理、整頓、清掃、清潔、躾)

が全くなされて なかったのです。

就任当初の自分が頭ごなしに社員に言っても聞きいられる状況で無い事は

判っていたので他の解決策を模索するようにしました。

工場では製造過程で発生する「廃材、余材」がそこら中に溢れていました。

これら廃材、余材の形を見て、何かアクセサリーの様な物を作れないか?

社員に5Sの大切さに気づいてもらうつもりで話をしたが、

全く話ならなかったと 当時を語ります。

 

スチームパンクとの出会い

三島商工会議所の常議委員だった三宅社長は、

地元三島のコトリスラボという会社の新事業のプレゼンを

たまたま聞く機会がありました。

女性社長である寺田社長の子育てや家庭を持っている

女性クリエーターを集め 彼女らのためにシェアオフィースを

始めたプレゼンに感銘を受け、意見交換の場を持てたと言います。

そこで三光ダイカスト工業所の工場見学をする運びとなったのですが、

訪れた女性クリエーターの一人が

「この工場自体がスチームパンクだ」と発した事がきっかけとなります。

最初はその意味が解らなかったのですが、クリエーターの力を借り、

三宅社長自身も 勉強をしました。

スチームパンクとは、産業革命当時の英国のイメージで

蒸気機関をモチーフにした SFジャンルの一つです。

近未来的なファッションや造形が特徴でアニメ『天空の城ラピュタ』にも登場します。

 

チーム「スチームパンク」を結成する

「これはいけるかも」と確信した三宅社長は社内で、

スチームパンク・プロジェクト 創設の話をしました。

最初は三宅社長の話にあきれ返っていた社員たちでしたが、

自動車業界の今後の厳しい 現実を熱心に語り、常識に囚われず、

強みを活かす取組の重要性を説いたところ 30代の若手社員中心に

10名程が名乗りを上げ、少しづつプロジェクトが動き始めました。

なにせ正確な図面を基に寸法通りにキッチリ造る事しかやって来なかったため、

廃材や余材を基に何かを造ると言う今までの仕事の進め方と

は真逆な作業に 挫折感もあったという。

しかしプロジェクトの生みの親でもある女性クリエーターが

デザインを描き、それを基に職人系男子が試作品を造る

セッションワークが結成され、 この異業種セッションは

時に深夜まで上る事もあったそうです。

しかし、それはもはや会社の業務命令でやっているのではなく

自ら行動し、まるで工作に夢中になる少年にも見えたと言います。

こうしてスチームパンク・プロジェクトは軌道に乗り、

新宿でのブース出展や テレビ東京「ガイヤの夜明け」(11月1日放送)

でも取り上げられる事になりました。

10年後の経営環境変化への対応

スチームパンク・プロジェクトは始動したばかりで、

今後はいかに継続出来るかが 課題となりそうです。

引き合いも相当数来ているが、ビジネスモデル確立はこれからの様です。

三宅社長の想いは、最初は「出来ない、無理」と言っていた若手社員が

一つの事を成し遂げる力がついたのと、何よりの成果は危機感の無い社員

との距離感が ぐっと縮まった事だと語っています。

今後は自動車産業の変化に注視しながら、元請依存に頼る事のない

本業の発展を 育てる事が課題だとビジョンを語ってくれました。

三宅社長は10年後の経営環境の変化を見据えて、変化に適応する対応を

試行錯誤をしながら実施しています。

それにはTOPである社長が信念を明確にして、ビジョンを社員に語り、

ビジョン実現のための課題解決に行動を起こすミッションを胸に抱く事だと思います。

そうなれば三光ダイカスト工業所の社員の様に自走式に組織が始動し始めます。

変化への対応とはまさしくこの様な事例だと確信します。

投稿者プロフィール

丸山 一樹
丸山 一樹
丸山未来経営研究所(経産大臣認定 経営革新等認定機関) 所長 /大手自動車部品メーカーを経て独立。中小企業の社長の「ビジョン」を言語化し経営数字で裏付けするキャッシュフロー経営導入支援が専門。
社長の「社外NO2」の役割を新入社員の給料以下の報酬で意思決定に関わるキャッシュフロー経営導入支援パートナーとして活動中。